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2026.10.13
イベントレポート
次世代10人のプレゼンに審査員も悩んだ!…高校生ビジネスアイデアコンテスト2026を開催しました
プレゼンテーション時間は5分。質問応答は3分。審査員席には区役所や金融機関、起業支援のプロたちが座ります。高校生にとっては緊張する状況ですが、いざ登壇して話し始めると、日常生活や学校生活で感じた困り事を解決するユニークなアイデアが飛びました。起業家交流事業「EDONOWA」が、区内在住・在学の高校生を対象に初開催した「高校生ビジネスアイデアコンテスト2026」の模様に迫ります。
ファイナリストが登壇。先生、親御さんに見守られながら

江戸川区が主催する起業家交流事業「EDONOWA」では今年度、区内在住・在学の高校生を対象にした「高校生ビジネスアイデアコンテスト2026」を初めて開催しました。応募期間中には、想定を超える8校47名の高校生よりビジネスアイデアが寄せられ、審査を実施。9月5日(土)にタワーホール船堀で行われた最終プレゼンテーションには、ファイナリストとして10名が登壇しました。
最終プレゼンテーションに先立ち、江戸川区の産業経済部経営支援課でEDONOWAを推進する大滝正晴氏は、若者の起業意識の醸成に取り組んだ背景を「将来、自分のアイデアで起業する道もあるということを選択肢に入れていただきたいと思い、身近な課題や日常生活でこうだったら良いのにという気づきをテーマにビジネスアイデアを考えていただくコンテストの開催に至りました」と説きます。また、勉強や部活の合間を縫って、アイデアを考えた高校生たちを称えるとともに、同氏はサポートをした学校関係者や保護者の皆さんに対しても謝意を示しました。

そして、この日は5つの項目による審査へ。「課題発見力」「アイデア・独創性」「課題解決力」「実現可能性」「プレゼンテーション」の観点が示されたほか、高校生が持つアイデアの可能性やチャレンジする意欲も考慮されました。審査員には大滝氏をはじめ、日本政策金融公庫が主催する「高校生ビジネスプラン・グランプリ」に携わる同公庫の高橋隼之介氏(国民生活事業本部 東京創業支援センター所長代理)と、起業支援を行う株式会社ツクリエの鈴木英樹氏(代表取締役)が就き、登壇者と向き合います。
プレゼン時間は5分。質問応答は3分。その光景は、スタートアップ企業が臨むピッチコンテストとまるで同じです。緊張した面持ちながら、仲間や学校の先生、親御さんに見守られながら、高校生たちはステージへ立ちました。
学校生活、日常生活の気づきから生まれた多彩なアイデアの数々

プレゼンテーションの模様を振り返りましょう。トップバッターは栗原晃さん(高校2年)です。2匹の愛猫がケンカをしたときに「どっちが先に手を出したか分からず、どちらを叱ればいいか分からない」という日常のひとコマから着想を得て、猫が話した言葉をスマートフォンのアプリと連携して自動翻訳する「猫翻訳型チョーカー」のアイデアを発表しました。
アプリを活用したアイデアは、このほかにも目白押しでした。田島優菜さん(高校2年)は洋服屋で「持っている服と合うかどうか思い出しながらコーデを組むのが大変だった」という体験から、クローゼットに搭載したAIが登録した服で着回しを提案してくれるアプリ「メモリークローゼット」を構想。天谷建仁さん(チーム名:Social Gear)は学校の同級生たちと一緒に、社会問題であるヤングケアラーの解決を目指して「寄り添いノート」という匿名で悩みなどを打ち明けられるアプリを紹介しています。

学生が直面する“勉強”の課題解決に繋がるアプリもありました。佐藤なつみさん(高校2年)が発表した「勉強したい人の勉強のための勉強アプリ」です。学習、復習、記録などを1つのアプリで完結できるサービスを考案。「勉強はしたいけど、道具を準備して机に向かうのは面倒くさいという人に届いて欲しい」という想いを語っています。
勉強の新たな切り口を示した方もいました。自分や家族、友人が多様な形態で学びを得ている姿を見て、企業と人を学びでつなぐ「出前授業カフェ」をアイデアにした磯﨑愛さん(高校2年)です。塾より気軽に、動画や本より深い学びをコンセプトに、カフェを教室として見立てた学びの機会を作ります。

一方で、実体験から製品案をプレゼンした高校生もいます。奇しくも2案あったのは“雨具”でした。小川由樹さん(高校3年)は、2024年4月より都立学校における自転車通学時のヘルメット着用の必須化、2026年4月から自転車にも交通反則通告制度(青切符)が導入され、傘差し運転に対する反則金として5,000円が設定された背景を踏まえて「おぉ!NEWヘルメット型ポンチョ!」を紹介。ヘルメットとポンチョが一体となった製品案です。小林聖奈さん(高校2年)は、お母さまがお気に入りの傘を無くした姿を見た経験から、盗難防止を目的に指紋認証機能がついた傘「ロックアンブレラ」を発表しました。
また、在留手続きを経験して書類管理が煩雑と感じた孫篠芸さん(高校2年)は、在留カードやパスポート、申請書類を収納する「在留手続き一括収納ポーチ」を立案。学校生活で通学バッグが教科書などで重くなり、持ち運びが大変という困り事を解決する製品を開発しているのは、松居悠羽さん(高校1年)でした。「学生のBAGライフに革命を!」をコンセプトに、数回の試作を経た「2BBAG」を発表しています。

プレゼンテーションのトリを務めたのは、高等専門学校に通う足立響さんでした。学んでいる技術的な知見を活かして、紙のスタンプカードをアプリ化し、専用の読み取り機でスタンプを付与できる「Tapcho」を紹介。プロトタイプを示し、発案のきっかけとなった商店街へ導入する未来を描きます。
審査員も悩んだ最終審査。優秀賞のほか、審査員特別賞も設けられる

そして、全チームのプレゼンテーションが終わり、審査を経てコンテストはフィナーレへ。どのアイデアもそれぞれに魅力があり、優秀賞3チームの発表に加えて、審査員特別賞も設けられることになりました。
その特別賞には「Tapcho」を発表した足立響さんが選ばれ、会場は大きな拍手に包まれました。プレゼンターを務めた江戸川区の大滝氏は「アイデアをお店にヒアリングして生の声を聞いていたり、競合分析をしっかりとやったり、技術に裏づけされた素晴らしいアプリを開発しています」と、受賞決定に至ったポイントを明かしました。
続いて、優秀賞の発表です。まず名前が呼ばれたのは「勉強したい人の勉強のための勉強アプリ」を考案した佐藤なつみさんでした。高校生らしい着眼点を評価され、大滝氏は「勉強が1つのアプリで完結する。その都度違うアプリを立ち上げて閉じるのが面倒だという課題を解決するアイデアがとても良かった」とコメントを寄せました。本人は受賞に驚いた様子でしたが、次のように喜びを明かしています。

「皆さんのプレゼンが良すぎて、絶対に私がいただけることのない賞だと思っていました。それなのに選んでいただけたので、とても嬉しいです。今後は就職したいと考えているので、社会人になって、このアイデアを実現できたらといいなと思っています」
続いて、優秀賞の2チーム目は「出前授業カフェ」を提案した磯﨑愛さんでした。プレゼンターを務めた高橋氏は、開口一番「エネルギッシュなプレゼンに引き込まれ、心をつかまれた」と称賛。その上で「ご自身が体験をした出前授業の魅力を、もっと多くの人に知ってほしいという想いで、ほかの人の幸せを願った素晴らしいプランだった」と、好評を述べました。本人も将来の起業へ想いを語っています。

「素敵な機会をいただけて、プレゼンも皆さんにすごく聞いていただいて楽しかったです。事前のメンタリングでプレゼン準備をサポートしてくださったのも心強く、起業するなら江戸川区で!ぜひこれからアドバイスを生かして頑張っていこうと思います」
最後に、優秀賞として名前が読み上げられたのは「2BBAG」の松居悠羽さんでした。プレゼンターを務めた鈴木氏は「とにかく行動によって、企業と共同で試作品も作って素晴らしいと思います」と、開発を押し進めた姿勢を評価。「必ず買うので、できたら連絡をください」と商品化へエールを送ると、本人も「絶対に商品化するので、皆さん買ってください」と完成を誓いました。

今後、受賞者にはアイデアのさらなるブラッシュアップや、全国規模のビジネスコンテストへチャレンジする際に向けて、起業支援のプロフェッショナルからメンタリングの機会を提供。商品化・事業化に向けて継続的なサポートを行っていくほか、参加された高校生へ個別支援の機会を設けます(希望者のみ)。
なお、この他にも登壇した高校生一人ひとりに対して、審査員からさまざまなコメントが寄せられています。

● 栗原晃さんへ|アイデア:猫翻訳型チョーカー
「猫が好きな方は日本中たくさんいると思いますので、これを望んでる方もたくさんいると思います。実現可能性を模索していきながら、ぜひアイデアの実現に向けて動いてほしいと思いました」
● 田島優菜さんへ|アイデア:メモリークローゼット
「アプリによる着回し提案だけでなく、AI搭載のクローゼットと連動して、その中身を踏まえた着回しを提案してくれる。私も、同じような柄のネクタイを買うことがあるので、経済的なメリットも生まれるアイデアだと思いました。課題設定や、実現に向けたアイデアが具体的で素晴らしいと思います」
● 孫篠芸さんへ|アイデア:在留手続き一括収納ポーチ
「江戸川区は東京23区内で、一番外国籍の方が多い区になります。まさに、我々の区に向けた素晴らしい提案だと思いました」
● 小林聖奈さんへ|アイデア:ロックアンブレラ
「傘を盗まれたくないという思いから、暗証番号式ではなく、指紋認証にしたアイデアがすごく面白いと思いました。その対策によって、家族で同じ傘をシェアできる発想も素敵だと思います」
● 小川由樹さんへ|アイデア:おぉ!NEWヘルメット型ポンチョ!
「2つを1つにするアイデアは、ビジネスアイデアを考える上で、とても良い発想だと思いました。ヘルメットは自転車で通学するときに必ずしないといけないため、雨になったときにポンチョが出てきたらすごく便利だと思います」
● 天谷建仁さん(Social Gear)へ|アイデア:寄り添いノート
「社会課題の解決、地域貢献につながるすばらしいアプリだと思います。ヤングケアラーは本当に深刻な問題です。当事者が抱える悩みを素直に吐き出せる場は、確かに必要ではないかと思っています」
審査員総評「ひとつひとつの積み重ねが、将来自分のなりたい姿に」

14時の開会からあっという間にクロージングを迎えた本コンテスト。高橋氏より総評が述べられ、一番印象的なことを「身近にある困り事を自分事としてとらえ、いろいろな視点から観察していく力を皆さんは身につけられている」と話します。
コンテストという性質上、受賞できた方、できなかった方がいるものの、同氏は「1つの結果にすぎません」とも強調。「コンテストを通じて何をしてきたか。自分のチャレンジを褒めてほしいです。この場に来ただけでも、コンテストに応募しただけでも、皆さんは他の高校生とは違う行動で、一歩踏み出しました。ひとつひとつの積み重ねが、将来のなりたい姿につながります。この経験を糧に、これからも頑張ってください」と区の未来を担う世代へ、力強い言葉を送りました。

表彰式を終えたあとには、交流会も実施。日頃通う学校の枠を超えて同世代が語らい、審査員とも活発に意見交換した姿も印象的でした。人が“つながり”、輪が“ひろがる”きっかけを提供していく取り組みとして始まったEDONOWA。その輪を、今回の取り組みを通じて若い世代にも広げることができました。今後も、さまざまな人がつながり、新たな一歩を踏み出せる場を作っていきます。